修士課程2年 栗林志恩(2023年当時)

修士1年の間はどのような生活をされていましたか?

基本は毎日大阪の豊中キャンパスにある研究室に通っています。ただ昨年度はPhase-αの測定が開始されたので、実験設備のある茨城県東海村のJ-PARCに行く機会が多く、合計で半年ぐらいは東海村に行っていました。
1日のタイムスケジュールはこんな感じですが、ビーム試験前などは準備で忙しく、もっと研究室にいる時間が長くなったりします。

9:00 起床
10:00 研究室到着、メール確認、作業
12:30 昼食、休憩
14:00~ 作業
20:00~21:00 研究室を出る
22:00 メール確認
24:00~25:00 就寝

昨年度の年間スケジュールはどんな感じでしたか?

4月 入学、実験準備
5月 実験準備
6月 ビーム試験、新入生歓迎会
7月 ビーム試験、COMET実験全体報告会*1
8月 KEKサマーチャレンジ
9月 物理学会
10月 留学生歓迎会
11月 COMET実験全体報告会
12月 青木研山中研合同年末発表会、忘年会
1月 実験準備
2月 ビーム試験
3月 ビーム試験、送別会、物理学会、COMET実験全体報告会

*1 各地のCOMET実験に参加している研究者が一同に集まって、一週間ほど研究成果を報告して議論します。

一番楽しかったイベントはなんですか?

6月にJ-PARCで行った、 MLFビーム試験です。
自分が製作した検出器を初めて実際にビームに対して使った試験で、想定している信号が確認できたことで、初めて素粒子の反応を実感したのが面白かったです。

学部生の時と、生活は変わりましたか?

学部の頃は素粒子理論の研究室で友人と昼から深夜にかけて勉強することが多かったのですが、実験の研究室になってからは他の研究者の活動時間に自分も活動するようになり、人間的な生活を送るようになったと思います。

この研究室で充実した生活を送るためのアドバイスはありますか?

この研究室では、スタッフの方から大学院生、留学生、学部生まで隔たりなく日々活動をしています。立場を問わず色々な人と積極的に話して研究に関わることで、いろいろな楽しいことがあると思います。

J-PARCにて、自作の検出器と

修士課程2年 宮滝 雅己(2022年当時)

今どんな研究をされていますか?

私はCOMET Phase-I実験に向けてオンライントリガーシステムの開発を行っています。ミューオン電子転換過程の探索を目指す本実験では高強度ミューオンビームによる背景事象の除去と高いトリガーレートの克服がポイントです。そこで先行研究において信号電子の検出効率を高く保ったまま、背景事象起因のトリガー数を抑える新しい手法として、CDCのヒット情報を用いたFPGAベースオンライントリガーシステムが考案されました。私はこれをさらに高アクセプタンス、低フェイクトリガーなシステムにするため研究を行っています。具体的にはシミュレーションデータを用いて開発中のトリガーアルゴリズムの最適化を行なったり、FPGAのファームウェアの開発を行っています。

普段、どこでどういうメンバーで研究していますか?

基本的には豊中キャンパスで研究を行っています。オフィスでプログラムを書いて、簡単なエレクトロニクス試験は地下実験室で行うと言う感じです。また、Phase-Iのメイン検出器であるCDCは現在KEKつくばキャンパスにあるので、先輩の実験や現場作業の手伝いで出張することもあります。また現在Monash大学のコラボレーターと研究するためオーストラリアのメルボルンにいます。

日々の研究でわからないことがあったり方針を決めたりする時は、阪大の指導教官やMonashのコラボレーターに質問したり議論したりしています。また週に一回阪大のCOMETグループでミーティングがあり、そこで研究の週間報告を行いスタッフと学生で議論を行います。年に3回COMET実験全体のミーティングがあります。そこでは海外のコラボレーターも含めて研究の進捗を報告し議論を行います。

研究は面白いですか?

基本的に毎日楽しく研究しています。私は修士課程では素粒子実験で何か機械学習に関連した研究ができたらいいなとぼんやりと思っていたので、今概ね望み通りの研究ができています。また現在Phase-Iの開始が迫っており、数年後には自分が開発に関わったシステムが稼働することになります。これはとてもエキサイティングだと思います。またCOMET実験を通して海外のコラボレーターと議論したり、海外で研究インターンシップをする機会が得られたりと、海外に興味がある私にとってベストな環境で研究できていると思います。

なぜ今の分野に進もうと思いましたか?

世界中の人と協力して、世界最先端の実験技術を開発し、世界最高感度を達成することはとてもエキサイティングで面白そうと思ったからです。